PPバリエーション大阪教室展

2012.11.01

東京のカリグラファー中村仁美さんのもとで、大阪でPPバリエーションを勉強しているメンバーによる作品展です。
日頃の練習の成果をご覧ください!カードや小物等の販売もあります。

【日時】2013年2月14日(木)~18日(月)
12:00 ~19:00 (最終日17:00まで)

【場所】イロリムラ「89画廊」 展示室3

大阪市北区中崎1丁目4番15号
TEL:06-6376-0593
http://www.k3.dion.ne.jp/~irori-05/

【展示】額自由作品(各1点)
テーマ展示「スクエアデザイン」(各1点)
ジャーナル、カード、立体小作品など

 

【出展者】1期生(19名)、2期生(13名)、講師:中村仁美さん、友情出展:林順子さん

 <1期生>

青木陽子、芦谷真規子、伊坂真美、井上眞由美、川島朋恵、木作輝代、楠本麻美子、
古賀恵利子、田中真規子、谷田ひろこ、辻井由美子、徳光祥世、信谷香奈恵、
林真紀子、福本幸子、丸池由佳理、宗像みずえ、籔本准子、山下華代

 <2期生>

綾野三和子、生玉絹子、岩崎千恵子、梅田和美、大角愛、清原ひふ美、
鳥羽京子、原田素江、増井陽子、宮内久代、村井友子、山川雅代子、山根知子

 

以下の文章と作品はすべて中村仁美さんによるものです。


 

【カリグラフィー/Calligraphy】

カリグラフィーとは「美しく書かれたもの」という意味のギリシャ語を語源とします。
2000年以上のカリグラフィーの歴史の中で様々な書体がありますが、その中でも多くの方が良く知っているのは『イタリック体』でしょう。
イタリアのルネッサンス期(14~15世紀以降)。
人文主義者たちが、作り出した人文主義者体(Humanist Hand/ヒューマニスト体)。
これをより速く書けるように改良・発展させ、傾斜がつけられるようになって行きました(Humanist Cursive/ヒューマニスト草書体)。
その後イギリスにも伝わり、「イタリック体」と呼ばれるようになりましたが、今もグリーティング・カードやウェルかもボードなど、身近な所で使われています。

イタリック体に限らず、カリグラフィーの様々な書体は、書体ごとに一定のルール(文字の高さ・ペン先の角度・傾き具合等)に則って、全て先が平らになったペン先を用いて書かれます。



<<大文字体>>

ROMAN CAPITALS(ローマ大文字体)
ローマ帝国の時代約2000年程前に確立。トラヤヌス帝の戦勝記念碑に彫られた文字が有名(113年)。

ROMAN RUSTICS(ラスティック体)
ローマンキャピタルと同時代に使われた。ポンペイの壁画に残されたものが良く知られている。

UNCIAL(アンシャル体)
主に4~9世紀にかけて、キリスト教の書物に使われた。

 

Insular Majuscule(インシュラー大文字体)
「Insular」とは、島嶼(島々)を意味する。Irish Majuscule, Irish Half Uncialとも呼ばれ、7世紀頃からアイルランドで使われるようになった。

・VERSAL CAPITALS(ヴァーサル体)
この書体名は、中世の写本の中で、詩(verse)の頭文字として、このような“Built-Up(組み立てられた)”による文字が使われた事に由来。
Built-Up Letters(ビルトアップ レター)には、ローマンキャピタルを元にしたヴァーサル体の他に、アンシャル体をベースにしたLombardic(ロンバルディック体)がある。
現代のカリグラファー達はこうした書体をベースに、独自のモダンなBuilt-Up Lettersを作り出している。

 

<<小文字体>>

・Carolingian(カロリンジャン体)
9世紀、フランク王国カロリング朝時代カール大帝の元に確立した初めての小文字体。

・Foundational Hand(ファウンデーショナル体)
19世紀終りにEdward Johnston(1872~1944/カリグラフィーの技法を現代に蘇らせた)が10世紀のイギリスの書体(=イングリッシュ・カロリンジャン)で書かれたラムジー詩篇を元に考案。

 ・Gothic Black Letter(ゴシック体)
11~12世紀頃に登場。15世紀頃まで北ヨーロッパを中心に広く使われた。

 ・Italic(イタリック体)
イタリア、ルネッサンス期に人文主義者達がHumanist Minuscules(ヒューマニスト・小文字体)を発展させた。

 

・Rotunda(ルタンダ体)
13~16世紀にかけてイタリアを中心とした南ヨーロッパで使われたゴシックの一種。

・Fraktur(フラクチャー体)
16世紀頃、ドイツを中心にした北ヨーロッパで発展したゴシックの一種で、20世紀まで使われた。

 

・Gothicized Italic(ゴシサイズド・イタリック体
Edward Johnstonが生み出した書体。ゴシックとイタリックの要素を併せ持つ。多くの現代カリグラファー達も、様々な書体の要素を抽出し・組み合わせる事によって新たなhybrid体(二つ以上の書体の良い特徴を併せ持つ)を生み出し続けている。

 

 

【カッパープレート体とPointed Pen Variations】

カッパープレート体はイタリック体をベースとしており、17世紀に銅版印刷をするために(銅板に)彫られたのが始まりです。
Broad Pen(カリグラフィー専用の先が平らになったカリグラフィー・ペン)を用いてかかれる上記の書体に対して、この書体においては弾力性に富んだ先端が細いペン先(Pointed Pen)を使用します。
このペン先によって非常に繊細なヘア・ライン(=細い線)が作られます。一方、シェード(=太い線)は、ペン先に圧力を加える事によって生み出されます。
文字が規則的・連続的に書かれる為、フォーマルでエレガントな印象を与えます。
さらに、大文字(イニシャル)には装飾ラインが加えられ、その華やかな印象がより一層際立ちます。

Pointed Pen Variationsの各書体においても、ペン先はカッパープレート体と同じものを使用します。
よって、こうしたスタイルは『ツール(道具)』のヴァリエーションと言って良いでしょう。
スタイルの元になるのは、Broad Penによる各書体・・・イタリック体、ゴシック体、ファウンデーショナル体、カロリンジャン体などの小文字体。
そして、ローマン・キャピタルやアンシャル体などの大文字体。
これらの書体の特徴を踏まえた上で、Pointed Penならではの表情を加えて行きますので、様々なヴァリエーションを生み出す事が可能です。
以下、使用される道具やPointed Pen Variationsによる書体・作品例等をご紹介します。



『使用する道具』

・先端がとがった、弾力性のあるペン先
・ペン先を差し込む部分が斜めになっているオブリーク・ホルダー

<例>
*Hunt 101(米国製), Gillott 404(英国製)・・・硬くしっかりしていて頑丈。初心者向き。
*Hunt  99・・・101よりもさらにflexible  (hair lineは103の方が繊細)
*Gillott 303・・・404よりもflexibleで、hair lineが繊細。
*Leonardt EF Principal・・・英国製。100年前に使われていたヴィンテージ・ペン最高品質の復刻を目指して、Brian Walkerの協力により開発・製造された。
*Brause 66 EF・・・独製。非常にソフトで繊細。専用のホルダーが必要。

 

≪カッパープレート体≫

≪Pointed Pen Variations-イタリック体、ゴシック体、アンシャル体、ローマン・キャピタル、その他≫

*イタリック・バリエーション
B/Penによるイタリック体のフォルムを元に、P/Penの特性を生かしてアレンジした例。様々な可能性の一つ。

*イタリック・バリエーション(Italic Capitals)とカッパー・プレート体の組合せ。

*アンシャル・バリエーション
アンシャル体の特徴を取り入れたバリエーション。

*ゴシック・バリエーション
小文字はイタリック体を元にし、垂直に書かれている。大文字は、フラクチャー体からのアレンジ。

*キャピタル・バリエーション
ローマン・キャピタルを元にして書かれたSans Serif(セリフが付いていない)タイプのキャピタル。
スタンダードなタイプと、その変化の可能性を示している。

 

*ファウンデーショナル・バリエーション/カロリンジャン・バリエーション
ファウンデーショナル体、カロリンジャン体の特徴を生かしたバリエーション。その他、Broad Penによる様々な書体を土台にしたPointed Penによるバリエーションの可能性は尽きない。

 

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<<カラー小作品>>

 

ウォールナッツ・インクによる濃淡を
生かした作品。
 A to Zデザイン。文字はガッシュによる
カラー・グラデーションと金で。
黒い紙 はNTラシャ。

 

 墨の濃淡とパステルを生かした作品。 タイトル「Celebration」。
文字は墨を使用。
水彩画材とパステルでの着色。

 


 

主催:カリグラファーズ・ギルド会員 籔本准子・生玉絹子・中村仁美